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北浜M&A通信
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M&Aにまつわる落とし穴
~「サンクコスト」「エージェンシー問題」「PMIとのギャップ」とは(第7回)

 前回の北浜M&A通信では、入札のテーマによっては(本来勝者であるはずの)買手が必ずしも勝者たり得ない、という「勝者の呪い」のお話をした上で、M&Aにおいては相乗効果(シナジー)が期待されるので、「呪い」に巻き込まれることなく「勝者」と成り得る、というお話をさせていただきました。
 しかしながら、期待されたシナジーが生まれない、期待されたシナジー以上に高い価格をつけてしまった、といった理由で結果的に「呪い」に巻き込まれた事例は枚挙に暇がありません。そういった事例を生む落とし穴をいくつかあげてみましょう。

 ① 「サンクコスト(埋没費用)」 サンクコストとは、「それまでに使ってしまった費用」のことです。群馬県の八ッ場ダム建設中止問題を論じていた時によく使われていたのでご存知の方も多いかもしれません。M&Aを検討するにあたって発生した調査費用やアドバイザー費用、あるいは担当者の労力は、買収を中止しても返ってきません。従って、入札の最後になって金額が高騰したり、そもそも買収そのものを見直さなければならない問題が出てきたりしても、「ここまでコストをかけたのだから、後には引けない」と考えて、強引に進めてしまいがちです。

 ② 「エージェンシー問題」 委託者(プリンシパル)が代理人(エージェント)に業務行為を委任する関係をエージェンシー関係と呼びます。会社においては、株主が経営陣に委任している関係のことを指すことが多いですが、会社として執行役員や部門長にその部門を任せている関係も同様です。経営陣(あるいは部門長)はともすればその組織を拡大したい、という欲求があり(それ自体は誤っていないのですが、在任中の自己の名声や利益を目的としている場合は問題ですね)、結果収益性を無視した規模拡大、M&Aであればシナジーを過剰に見積もったり、正当な価値評価を大幅に上回る相手方の条件を鵜呑みにしたりする形で、株主(あるいは会社全体)の利益に反することとなるという問題です。

 若干話は脱線しますが、出光興産と昭和シェル石油の合併計画にまつわる議論は、まさに、大株主として創業家が存在する上場企業において、「委託者が誰なのか」という議論ですね。

 ③ 「PMI(ポストマージャーインテグレーション)とのギャップ」 ポストマージャーインテグレーションとは、M&Aを実行した後に、その統合効果を最大化するための統合プロセスのことをいいます。通常、統合プロセスには、理念・戦略やマネジメントフレームの統合である経営統合、業務・インフラや人材・組織・拠点の統合である業務統合、企業文化や社風の統合である意識統合の三段階があり、その膨大な範囲に亘る統合を成功させるためには、全体との整合性を取りながら個々の統合作業を進める必要があります。実行前に想定したシナジー効果を得られるかどうかは、統合プロセスの巧拙によるところが大きいのですが、ともすれば、最も巧くいった場合の期待値が織り込まれてしまいます。

 それでは、実際にM&Aを実行した上場企業の経営幹部は自らが携わったM&Aについてどう考えているのか、昨年5月に株式会社KPMGFASが行った「KPMG M&A Survey」を次回眺めてみることにしましょう。


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