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北浜M&A通信
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譲受戦略を動機付ける逆境
~厳しい環境の会社こそM&Aを積極的に検討する時代に(第9回)

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 北浜M&A通信第1回でお伝えしたように、昨年の「日本企業による海外企業の買収」は一昨年から倍増し過去最高となりました。今年も、ソフトバンクグループ(9984)がイギリスの半導体設計大手のアームホールディングスを3.3兆円で買収するという過去最大の買収案件が成立する等、順調にその取引金額・件数を増やしています。

 先月も、数多くのM&Aが発表されました。その中で二つの案件を紹介します。まず、ルネサスエレクトロニクス(6723)による米国同業のインターシルの買収。取引金額としては今月最大の約32億ドル(邦貨換算約3300億円規模)を投じて、ルネサスにとって「欠けたパズルのピース」を埋めます。もう一つは、大日本住友製薬(4506)による、米国医薬品ベンチャー企業シナプサス社の買収です。こちらも6億ドル(同620億円規模)以上を投じて、神経領域の製品パイプラインを増強します。

 この二つの案件の共通点は、事業を補完できる海外企業を相応の対価を投じて買収する、ということですが、もう一つ大きな共通点があります。それは買手となった企業が、事業再構築のプロセスにある、ということです。ルネサスの属する半導体業界は変化と競争が激しく、いわゆる日の丸連合ともいえる経営統合の後、円高や東日本大震災の影響もあり急速に業績が悪化。産業革新機構(国も出資する企業再生ファンド)の出資を受け、一昨年には恒久的給与削減や希望退職者募集といったいわゆる「リストラ」を行ったところです。大日本住友に至っては、その二日前に希望退職者募集と役員報酬減額を発表しました。その理由は、国内外において、短期的に売上が想定を大きく下回っており、また中期的には主力商品の独占販売期間満了が待ち受けており、人員が過剰ということだそうです。

 リーマンショックの頃までは、業績不芳の会社にM&Aの提案に行くと、「当社は社員の雇用を守るのに精一杯で、他社を抱える余裕はない」「リストラをして従業員に迷惑をかけたところなのに、会社を買う、などということができる訳がない」と言われることが少なからずありました。金融機関の融資スタンスもまだまだ企業与信が中心でしたから「そもそも買収資金が調達できない」ということもあったかもしれません。M&Aで会社や事業を譲り受ける会社というのは、業績が好調で、獲得した収益を再投資する余裕がある会社だ、と。もしかすると今もそういうイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
今は違います。むしろ本業が行き詰まっている会社こそ、生き残るための有望な経営資源を獲得する機会を真剣に模索しています。金融機関も、プロジェクトファイナンス手法で、相乗効果も加味した事業計画に基づき融資します。

 パナソニック(6752)は2012年度、希望退職も併せ社員を10%削減しました。それと前後して、果断なM&A戦略を開始し、既にその果実が実りつつあります。業績好調な会社は、M&Aに依らずとも本業への再投資を行えばよく、個別事案への執着が薄いとも言えますが、厳しい会社においてこそ、会社の命運を変えるべくチャレンジを行う時代が到来している、ということですね。譲り受ける側の動機の話、次回以降に続きます。


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