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北浜M&A通信
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2016年を振り返る②
~報酬の高い安いを判断すべき要素はその絶対額ではなくて付加価値(第12回)

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 あけましておめでとうございます。今年も様々な切り口でM&Aにまつわるよもやま話をお届けしていきますのでよろしくお願いします。

 同志社大学大学院で私が担当する「実践M&A」講座の秋学期後期分は、先月3日に開講しました。初回講義では、導入を兼ねて受講者に2016年で最も印象に残るM&A案件とそれを選んだ理由を述べてもらいます。これにより受講者の関心がどこにあるかよくわかります。

 挙げられた中に、ソフトバンクグループ(9984)によるアーム・ホールディングス(英)の買収がありました。取得価額が3兆3千億円ということで、海外企業の買収では史上最大というのがその理由です。取得関連費用が234億円ということで、英国の印紙税を除きその大半がM&Aアドバイザーへの報酬となります。このような案件では内外の複数のアドバイザーが就任します。日本勢ではみずほFG(8411)が一翼を担いました。

 トムソン・ロイターが「M&A市場リーグテーブル」を発表しており、投資銀行やM&A専業会社は、アドバイザーの力量を示すこととなるこの順位を重視し、チームの評価も行っています。ランクバリュー(純負債を含む取引金額)で決まるランキングにおいては、これ1件でみずほの圧勝が確定したので「目標が失われた」と嘆く投資銀行メンバーが多数いました。

 ここまで読まれた読者の方は、報酬が高い、とお感じになるかもしれません。しかし、その規模、法律・会計制度の異なる海外案件であること、そしてリスクはあるものの壮大なシナリオが描ける本件において、私は、この報酬は決して安くはないが妥当であると感じます。そういう意味では対照的な、少し残念な案件をご紹介しておきましょう。

 昨年10月に発表されたA社の適時開示資料によると、取得したB社の価額が54百万円、アドバイザリー費用等が53百万円とありました。M&A案件には、開示資料には表れない事象、例えば、退任する役員への退職金や、不動産等の簿価と時価の差額等があり、一概には言えませんが、B社の売上が3億弱、利益はほぼトントンであることを考えると、その報酬の妥当性、もしくは総コストを賄う何らかの可能性が示されないとA社の株主としては納得できません。

 しかも、そのリリースの2週間後に、A社は、「仲介手数料等の発生」を理由として「経常利益6割減」という通期業績予想の下方修正を発表しています。おそらくA社は、いくつかのM&A仲介会社が根拠としている総資産(B社は8億円強)を基準として算出された報酬を契約どおりにアドバイザーに支払ったのだと思われます。

 契約当事者が合意の上で行った取引について、何か申し上げる立場にはございませんが、M&Aが企業の存続と発展を企図して行うものである以上、このM&Aが生み出し得る収益計画等に見合った妥当な報酬である必要がありますし、せめて、適切な情報開示への助言を行う責任がアドバイザーにあると考えます。このままではA社の従業員は、B社の買収に伴う経営陣の判断を評価できず、B社の従業員は、肩身の狭さと将来への不安感に苛まされることでしょう。

 2017年は、経営戦略におけるM&Aと、その担い手としてのアドバイザーが、ますますその役割を増す一年となります。アドバイザーの真価が問われる一年となりますし、私達も一層、健全なサービスの提供に努めていきたいと思っています。次回


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