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北浜M&A通信
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デューデリジェンスについて①
~たかがデューデリジェンス、されどデューデリジェンス(第13回)

 前回に引き続き、同志社大学大学院で私が担当する「実践M&A」講座から。今年の一回目の講義では、M&Aに精通した会計士をゲスト講師に招き、デューデリジェンス(以下「DD」)のうち、「財務DD」について受講者と考察しました。昨年実行されたホンハイによるシャープ(6753)子会社化の検討プロセスにおいて、DDの不備を理由として破談となりかけましたので、この言葉を耳にされた読者も多かったかもしれません。

 改めてDDとは、直訳すると「Due(当然の)Diligence(努力)」即ち「当然なされるべき努力」という意味で、現在ではM&Aや不動産取引に際して事前に行う調査活動のことをいいます。まずは私から、その「M&Aディール全体の中での位置づけ」や「種類」(「財務」以外に「法務」「ビジネス」「環境」「人事」「IT」等がある)、「会計監査との違い」等説明し、基本的な理解を深めてもらった後、ゲスト講師からお話を伺いました。

 私が、数多おられる会計士の中からこの方をゲスト講師にお招きしたのは、経験豊富なことは勿論ですが、会計にとどまらないコンサルティングファームを自ら経営されておられ、また、DDの依頼を受ける際には、経営者としての視点を交え、対象会社のPMI(M&A実行後の統合プロセス、連載第7回参照)まで踏み込んだ調査を依頼者に提案する、というスタンスでお仕事をされているからです。自由にお話いただいたにもかかわらず、私の事前講義とうまくシンクロした内容に加え、驚きの事例も散りばめられた楽しい講義となりました。 

 受講者から共感を得られたゲスト講師の言葉です。「財務DDは、膨大なM&Aの複数手続の中の一手続に過ぎない。DDに辿り着くまでの長い道のり、数多くの人々の苦労を考えれば、対象会社のオーナーや経理担当者の感情を損ない、それが原因でM&Aをブレイクさせることがあってはならない、という気持ちで、細心の注意を払いDDに臨んでいる。そのために、法務DDを行う弁護士、ビジネスDDを行う譲受企業担当者やその他専門家と協力連携して仕事を進めることが重要である。」「一方で、たかがDDされどDD、非常に大切な手続きであり、その結果次第では、スキームや譲渡価額の大幅な変更、もしくは避けたいことではあるが案件検討終了、という決断も必要になってくる」というものです。

 その話を受け、私から補足として最近のディールで相対したアドバイザーの話をしました。その担当者は譲手の「プライドが傷つき」「ストレスがかかる」ので資料の提出や詳細なDDを忌避することを私のクライアントに主張してきました。どうやら、それが自らの任務であると錯誤している模様です。

 どれほどDDを行う側が配慮しようとも、必要な情報提供がなされなければお互いの時間と手間が増大し、あるいは、完了することができず結果として譲手が目的を果たせなかったり譲渡後に不利益を被ったりします。アドバイザーの使命は、指摘事項を踏まえたうえでの条件維持や、リスク回避のための交渉であり、ここに自信のない、あるいは譲手の信頼を勝ち取れていない未熟な担当者が就任している場合には、むしろ譲手にこそ望ましくないこととなってしまう、ということに受講者は得心していました。
 次回もこのお話を続けます。