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北浜M&A通信
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「コインチェックのM&Aが拓くもの①」
テレビ生放送で語った「アーンアウト」手法とは(第28回)

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先月25日、日経CNBCの番組「昼エクスプレス」ゲストトークにお招きいただき、「M&Aの新潮流」と題し、10分あまり視聴者の皆さまに向けてお話させていただきました。まず、当日の二大トピックスとして、東芝(6502・2部)による東芝メモリ売却について中止の観測が出ていることと、武田薬品工業(4502)によるアイルランド製薬大手シャイアー社買収につき、提案条件の大幅引き上げと交渉継続が発表されたことがあり、岡村キャスターの質問にコメントさせていただきながら、ほぼ1年前に放送された日経CNBC「マーケッツのツボ」でお話したように、東芝のこの売却取引に関する混乱は継続し、武田はメガマージャー(巨大合併)の道を加速させていることに思いを巡らせていました。

 今回は出演時間が限られていたものですから、キャスターにお願いして、テーマを「マネックスグループ(8698)によるコインチェックの完全子会社化」に絞らせていただきました。ご承知のように、コインチェックは、注目を集め存在感が高まる「仮想通貨」の交換業者です。1月に不正アクセスによる事件が発覚し業務改善命令を受ける一方、その事件で流出したとされる仮想通貨相当分の補償を顧客に行いました。正式な発表は4月6日でしたが、それがスクープされた3日前ぐらいからマネックスの株価は上昇し、放送日の翌日26日に発表されたコインチェックの2018年3月期の決算では、(500億に迫る補償が実行されたことからある程度予想はされていましたが)その高成長率と利益率が明らかとなり、それを囃(はや)してマネックスの株価はさらなる上昇を見せました。

 仮想通貨の将来や、マネックスの株価については別の専門家に任せるとして、私がこのテーマを選んだのは、この取引に際し、「アーンアウト」手法が活用されたからです。
アーンアウトとは、売り主が所有している対象企業の株式を、買い主が対価を支払って取得する取引に先立ち締結する契約において、「その対価の支払いの一部をあらかじめ合意した条件にて算定し支払う合意」を言います。今回のケースで言いますと、コインチェックの株式の対価は、4月16日に支払われた36億円に「平成31年3月期から平成33年3月期までの各事業年度の税引後当期純利益相当額の50%分から訴訟費用などを差し引いた金額」を加えたものとなる、ということです。

 同志社大学大学院「実践M&A」の授業でも、M&A(企業合併・買収)の基礎知識として、このアーンアウトを初年度以来ご紹介してまいりましたが、一昨年にメタップス(6172・東マ)が子会社を通じて韓国企業を買収した際の開示資料が出されて、初めて実際の事例をベースにした説明を行うことができました。正直に申しますと、私がアドバイザーを務めたM&A案件の検討のプロセスで、これに類する提案を行ったことはありますが実現には至っておりません。そういう訳で、M&Aの契約書は基本的に非公開なので、絶対とは申せませんが、日本での事例はあまりないと考えられます。これに比べて、アメリカでは、(M&Aの契約書が公開された事例に限定されますが)約3割の取引において、こういった趣旨の条項が含まれていると言われています。

 なじみのない話なので、前置きが長くなりました。では、どうして日本ではアーンアウト手法が活用されなかったのか、そして今回の事案がもたらす影響は何か、次回に話を続けます。
※「昼エキスプレス」ゲストトークの模様は、動画配信サービスにて、ご覧頂けます。詳しくは、「日経チャンネルマーケッツ」のホームページまで。

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