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北浜M&A通信
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「調剤薬局M&Aを取り巻く環境」
~様々な変化や動きで覆される常識、その兆候を見逃すな(第30回)

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本連載も、30回の節目を迎えました。ひとえに読者の皆さまのご支援の賜物(たまもの)と感謝申し上げます。この2年半の日本経済を眺めるだけでも、さまざまな変化や動きがあり、それらがある種の常識となっていくわけですが、その常識はさらなる変化や動きで覆されますし、そしてその兆候は常にどこかに現れています。

 例えば、インバウンド(訪日外国人)の件数が爆発的に伸びており、これが日本経済の好調を支えていることは皆さまご承知の通りです。そして、その代表的な目的地の一つが京都であることは常識ですね。京都市内にもその需要に応えるべく、宿泊客受け入れ施設が多数建設されていますが、実は、その客単価が今年に入り減少に転じているそうです。民泊の台頭もありますが、観光地としての京都で日中を過ごすものの、宿泊は近隣の温泉などで、という人が増え需給のバランスが崩れてきた、というのがその理由のようです。

 M&A(企業合併・買収)の世界でも同じようなことがあります。M&Aの成約件数が着実に増加している中、調剤薬局のM&Aは、仲介した案件の概要を公開している業者の成約件数を合計すると昨年一年間で100件以上となり、専業を掲げる仲介業者が現れるなど活発な状況です。

 中でも、「門前薬局」(医療機関の側にある薬局の通称)は、その立地から、競争力が高く、高収益を上げているところが多く、スケールメリットを織り込んでさらなる高収益を期待する同業やドラッグストアによる争奪戦が繰り広げられ、元々の事業価値にプレミアムを乗せた好評価で数多く取引されてきました。
ところが、同様のカウントを行ったところ、今年の第1四半期については、その成約件数は昨年同期を下回っています。実際に私も4月に、あるオーナーの譲渡希望情報を入手し、複数の譲受先候補に打診してみましたが、その消極化を肌で感じることとなりました。

 要因のうちの一つが、2016年10月の規制緩和による「敷地内薬局」(医療機関の敷地内に開設される薬局の通称。厚生労働省が掲げる、地域に根ざした「かかりつけ薬局」を目指す、という方向性とは真逆ですが、その詳細や是非はここでは割愛します。)の解禁です。
 
 ここに、事業承継問題の解決のために、事業を第三者に譲渡しようという「門前薬局」オーナーがいるとします。オーナーが譲渡交渉を始めた後、医療機関内に「敷地内薬局」という強大なライバルが出現した場合、収益が減少し、事業価値が下がることが見通されます。オーナーにとっては、歓迎できない話ですが、見通しを共有した中で両者が折り合えば、取引は成立し、解決します。

 問題は、「敷地内薬局」の誘致が取りざたされている、あるいは、客観情勢として誘致される可能性が高い医療機関の門前薬局の場合です。買い手からすると、未確定であってもその影響を織り込む必要がある。オーナーにとっては、誘致が確定しない以上、事業価値評価が下げられるのは納得できない。「事実の発生」もしくは「事実の発生しないことが確定」すれば埋められるギャップのために交渉が長期化し、また頓挫する状況を回避することはできないのでしょうか。

 読者の皆さまはもうお分かりですね。本連載前2回(,)(でご紹介した「アーンアウト」その対価の支払いの一部をあらかじめ合意した条件にて算定し支払う合意の上で行うM&A)手法が、両者の着地点を見いだし、事業承継のタイミングを外すことなく取引成立させる可能性を見いだすツールとなることが期待されます。私も必要に応じその活用を模索していきたいと考えています。

※「昼エキスプレス」ゲストトークの模様は、動画配信サービスにて、ご覧頂けます。詳しくは、「日経チャンネルマーケッツ」のホームページまで。

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