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北浜M&A通信
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「2018年を振り返る」
~複雑な大型案件が成就する一年となりました(第36回)

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 あけましておめでとうございます。早いもので、本連載も開始から丸3年となりました。35回の内容で、ほぼ全体像を把握できるようになってきたので、同志社大学大学院で私が担当する「実践M&A」講座でも、連載をまとめたものを副読本として活用してもらっています。前回ご紹介したRIZAPグループ(2928・札ア)のM&A戦略の興亡に興味を持った受講生から、本連載で他に紹介された個別企業のM&A事例はその後どういう経緯をたどったのか、という質問もありましたので、今回はそれらの動きを中心に、2018年を振り返っていきたいと思います。

 第9回でご紹介した、2016年当時、過去最大のM&A案件として、3.3兆円でソフトバンクグループ(9984)に買収された英半導体設計大手アームホールディングスには、昨年二つの大きな動きがありました。「買収後、大幅な損失を計上してでも規模と人員を急拡大する動きが加速している」と一部メディアで指摘されていましたが、6月には英国のIOTサービス関連企業Stream Technologies社を、8月には米国に本拠を置き、日本人も創業メンバーに加わっているIOTプラットフォーム提供のTreasure Data社を相次いで買収しました。

 一方で、中国子会社について、その持分の過半数を複数の機関投資家や顧客に売却することで、結果として、現地合弁企業化された持分法適用会社とし、売却益を計上することを6月にソフトバンクグループは発表しています。この直後の定時株主総会で孫社長はアーム社の再上場を示唆したようですが、これは結果的には伏線であったといえるかもしれません。

 この案件を大きく更新して日本企業過去最大の6.8兆円(発表時、最終的に6.2兆円)を投じる武田薬品工業(4502)によるアイルランド製薬大手シャイアー社の買収検討が昨年4月に発表され(第28回ご紹介)、その合意内容が5月に発表されました。発表以降、本件の費用対効果の妥当性や買収資金の調達に伴う財務体質の悪化が懸念され株価低迷が続きましたが、手続きとして必要な12月の臨時株主総会で承認され、今月7日の武田薬品工業の約7.7億株の株式の発行を経て、8日にシャイアー社の株式100%を取得する手続きが完了しました。

 連日乱高下する東京株式市場の影響もあるかもしれませんが、株式の希薄化具合が確定し、直近の円高の進行もあり円建ての買収額が安くなったことで直近の株価は急伸後堅調です。創業家元会長の反対意見表明による混乱も相俟って、承認前後に見舞われた大幅な下落を本格的に取り戻せるかは、これからというところになりますね。

 創業家の関与で一時的に行方が見えなくなった案件といえば、第7回でコメントした出光興産(5019)と昭和シェル石油(5002)の経営統合が挙げられます。2015年7月の協議開始以来3年以上に亘り紆余曲折がありましたが、先月18日に両社の臨時株主総会で本年4月からの経営統合と新会社の経営体制について承認を得ました。こちらの方も、全体相場が低迷する中、株価は冴えませんが、早期のシナジー効果発現によって、新会社が掲げた、3年間で純利益の合計を5000億円以上にする、という目標の達成を目指すこととなります。

 東芝(6502・2部)による東芝メモリ売却も完了するなど、長期化していたり、その実現が懸念されていたりした案件が成就する一年ではありましたが、一方、昨年1月に発表された富士フイルムホールディングス(4901)による米国ゼロックスの買収は、膠着状態に陥っており、クロスボーダー大型M&Aの難しさを感じさせるところとなりました。

次回>>2月7日付を予定

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